インヴィンシブル投資法人・第29期(2017年12月期)決算・一口当たり分配金は1,564円

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インヴィンシブル投資法人2017年12月期決算 8963インヴィンシブル投資法人
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2018年2月20日にインヴィンシブル投資法人の決算が発表されました。
当初の予想一口当たり1,545円のところ1,564円で着地しました。
尚、利益超過分配金が36円含まれています。

分配金の着地とNOI利回りの改善

インヴィンシブル投資法人2017年12月NOI推移

2017年12月期の一口当たり分配金は1,564円で着地。当初予想の1,545円から+19円の上振れとなったが、うち36円は利益超過分配金であり、実質的な収益による分配とは言い難い。

  • 一口当たり分配金:1,564円(うち利益超過分配金36円)
  • NOI利回り:4.516%(前期比+0.1pt程度)

NOI利回りの改善は、主に取得物件の寄与によるものであり、運営効率の向上によるものではない。短信上では「積極的なアセットマネジメント」としてML・PM会社の変更や賃料上昇プログラムが挙げられているが、賃貸事業利益率には目立った改善は見られず、実効性には疑問が残る。

住居ポートフォリオ:賃料上昇プログラムの成果と限界

住居70物件のNOIは前年同期比+0.9%増加。期中平均稼働率は94.8%(前年同期比▲0.5pt)とやや低下。旗艦物件「ロイヤルパークスタワー南千住」を含む4物件のML・PM会社変更により、年間39百万円のNOI増加を見込むとされている。

  • 新規契約賃料:従前比+2.4%(契約件数ベース47.5%が上昇)
  • 南千住物件:新規契約賃料+10.3%(契約件数ベース87.3%が上昇)
  • 更新契約賃料:従前比+2.0%(契約件数ベース59.2%が上昇)
  • 総合賃料上昇率:+2.2%

賃料上昇プログラムは一定の成果を示しているが、短信上で強調されるほどのインパクトはなく、賃貸事業利益率には反映されていない。取得物件の寄与によるNOI増加が主因であり、運営スタイルの変化による収益改善とは言い難い。

ホテルポートフォリオ:安定的な稼働と賃料構成の偏り

ホテル40物件のNOIは前年同期比+3.6%増加。稼働率・ADR・RevPARはいずれも微増であり、安定的な運営が継続されている。

  • 稼働率:90.6%(前年同期比+0.1pt)
  • ADR:10,083円(前年同期比+0.8%)
  • RevPAR:9,131円(前年同期比+0.9%)

賃料構成は固定賃料49.1%(3,623百万円)、変動賃料50.8%(3,741百万円)と、変動比率が高い。景気感応度の高い構造であり、安定性には限界がある。

ポートフォリオ全体のNOIは前年から増加し8,890百万円。うちホテル部門が+11.2%、住居部門が+7.8%の寄与。期末時点の稼働率は98.2%と高水準。

財務構造:LTVの高止まりと資金調達の連発

インヴィンシブル投資法人2017年12月LTV・DSCR推移

2017年12月期末時点での有利子負債残高は186,983百万円。有利子負債比率は49.5%、LTV(簿価ベース)は51.3%。平均借入利率は0.51%。J-REIT全体の中でも高水準のレバレッジ体質が継続している。

  • 有利子負債残高:186,983百万円
  • 有利子負債比率:49.5%
  • LTV(簿価ベース):51.3%
  • 平均借入利率:0.51%

エクイティ・ファイナンス

ホテル5物件(既保有の五反田駅前含む)および特定目的会社の優先出資証券1銘柄の取得資金の一部に充当する目的で、2017年10月12日を払込期日とするグローバル・オファリングによる公募増資を実施。

  • 公募増資:887,959口(37,917百万円)
  • 第三者割当増資:44,398口(1,895百万円)

デット・ファイナンス

上記エクイティに連動する形で、みずほ銀行をアレンジャー、三井住友銀行をコ・アレンジャーとするシンジケート団によるニューシンジケートローンを実行。

  • 借入金額:22,993百万円
  • 借入金利:TIBOR+0.2〜0.8%(期間1〜7年の変動金利)

借入条件は年限ごとに細かく設定されており、金利は短期ほど低く、長期ほど高い構造。資金調達の多様化は進んでいるが、借入金の積み上げと増資の連発は、資本政策の一貫性に疑問を残す。

表面的な改善の裏に潜む構造的硬直と思想不在

インヴィンシブル投資法人の2017年12月期決算は、分配金の上振れとNOI利回りの改善が確認された期である。だが、利益超過分配金の含有、賃貸事業利益率の停滞、LTVの高止まり、そして資金調達の連発という構造的な硬直は依然として残る。

住居部門の賃料上昇プログラムやML・PM会社変更は一定の成果を示しているが、短信で語られるほどの運営改善には至っていない。ホテル部門は安定的に推移しているが、変動賃料比率の高さは景気感応度のリスクを内包している。

 

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