インヴィンシブル投資法人・第36期(2021年6月期)決算・一口当たり分配金は15円

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インヴィンシブル投資法人2021年6月期決算 8963インヴィンシブル投資法人
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2021年8月25日にインヴィンシブル投資法人の決算が発表されました。分配金は当初の予想一口当たり分配金は未定としていましたが15円で着地しました。

分配金の着地とNOIの赤字転落

インヴィンシブル投資法人2021年6月NOI推移

  • 一口当たり分配金:15円(予想未定→実績)
  • NOI:2,090百万円(前年同期比▲48.1%、▲1,936百万円)
  • NOI差引:▲774百万円(費用控除後)
  • 営業収益:3,806百万円(前年同期比▲54.4%)
  • 当期純損失:▲3,599百万円
  • 期末物件数:142物件(ホテル86、住居54、その他2)
  • 取得価格合計:502,717百万円
  • ホテル資産規模:450,609百万円(J-REIT最大)

NOIは前期から1,601百万円から減少し▲774百万円という壊滅的水準。

ホテルポートフォリオ:賃料再交渉と収益崩壊の制度化

主要テナントであるMHMグループとの間で、2021年1月〜6月の賃料条件を再交渉。固定賃料は当初契約の約20%に減額され、変動賃料はゼロ。支払総額は10億円のみ。

  • 固定賃料:1,000百万円(当初契約比▲80%)
  • 変動賃料:0円
  • NOI(MHM運営73物件):430百万円

取得済国内ホテル75物件のNOIは前年同期比▲27.1%減少。稼働率・ADR・RevPARはいずれも壊滅的。

  • 稼働率:35.6%(前年同期比▲12.5pt)
  • ADR:6,940円(▲4.0%)
  • RevPAR:2,472円(▲28.9%)

ホテルセクターは制度疲労を通り越し、構造的な収益不能に陥っている。

海外ホテル:営業再開の兆しと収益の空洞化

ケイマン籍ホテル2物件の収益は以下の通り:

  • 稼働率:7.9%(前年同期比▲29.7pt)
  • ADR:162米ドル(▲66.8%)
  • RevPAR:13米ドル(▲93.0%)

前々年同期比では、稼働率▲81.4pt、ADR▲61.1%、RevPAR▲96.6%。サンシャイン・スイーツは隔離需要で営業継続。ウェスティンはステイケーション需要で限定再開。ケイマン政府は9月から観光客受け入れ再開を計画しているが、収益回復には時間を要する。

住居ポートフォリオ:稼働率回復と賃料停滞

取得済住居54物件の期末稼働率は95.4%(前期末比+1.2pt)。期中平均稼働率は95.3%(前年同期比▲0.7pt)。NOIは横ばい。

  • 新規契約賃料:▲1.5%(契約件数ベース27.6%が上昇)
  • 更新契約賃料:+0.7%(契約件数ベース23.1%が上昇)
  • 総合賃料上昇率:▲0.2%
  • 坪単価:9,037円(前年同期比▲0.2%)

リモートワークによる郊外移転の影響で、都区部の賃料は下落傾向。その他地域は横ばい〜微増。更新率は79.7%(前年同期比▲10.4pt)とやや低下。

財務構造:短期借入の連発と金融機関の静かな警告

インヴィンシブル投資法人2021年6月LTV・DSCR推移

2021年6月期の資金調達は以下の通り:

  • タームローン(R):3,400百万円(三井住友信託、TIBOR+0.25%、1年)
  • タームローン(S):850百万円(三菱UFJ、TIBOR+0.25%、1年)
  • ニューシンジケートローン(T):3,057百万円(みずほ、TIBOR+0.25%、1年)
  • ニューシンジケートローン(U):3,039百万円(みずほ、TIBOR+0.25%、1年)
  • タームローン(T):570百万円(りそな、TIBOR+0.25%、3ヶ月)
  • タームローン(U):349百万円(シティバンク、TIBOR+0.25%、1年)
  • タームローン(V):570百万円(りそな、TIBOR+0.25%、6ヶ月)
  • 期限前弁済:10,000百万円(住宅6物件譲渡代金より充当)

借入は短期中心で、金利はTIBOR+0.25%前後。借入先は大手行に加え、りそな・シティバンクなど多様化。だが、借入期間の短期化は資金繰りリスクを高める。

一部では「レンダーはソフトバンクに期待しているのでは」との見方もあるが、実態は金融機関が慎重姿勢を強めている証左とも取れる。

ホテルREITの制度疲労と金融機関の静かな警告、それでも語られない運用思想

インヴィンシブル投資法人の2021年6月期決算は、ホテル偏重型REITとしての制度疲労がさらに進行した期である。分配金は15円、NOIは赤字転落。ホテル収益は崩壊し、住居部門は健闘するも限界。財務は短期借入に依存し、金融機関の姿勢は慎重化。

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