2016年8月23日にインヴィンシブル投資法人の決算が発表されました。
分配金は当初の予想一口当たり分配金が1,155円のところ1,187円で着地しました。
ホテル取得の加速と収益の底上げ

外部成長:ホテル取得に傾斜、売却はなし
2026年6月期において、インヴィンシブル投資法人はホテル資産の取得を積極的に進め、取得総額は約300億円に達した。取得対象は東京・大阪・福岡などの都市型ホテルであり、ポートフォリオに占めるホテル資産の構成比は前年同期の約40%から約60%へと上昇。売却は一切行われておらず、売却益の計上もない。
・ 取得総額:約30,000百万円(ホテル中心)
・売却:なし
・ ポートフォリオ総資産:約200,000百万円
・ホテル資産構成比:約60.1%(前年同期比+約20pt)
取得の選定理由や都市戦略はIR資料上で一切語られておらず、「取得しました」の羅列に終始。資産運用会社としての思想や哲学は不在であり、外部成長は単なる規模拡張に留まっている。
内部成長:ホテル収益の改善、レジデンスは安定
ホテル部門では、稼働率とADR(平均客室単価)の上昇が確認され、NOI(純営業利益)は前年同期比で約15%増加。OTA(オンライン旅行代理店)との連携強化や外国人対応のサービス拡充が奏功したとされるが、具体的な施策や運営改善の記述はない。
・ホテル稼働率:89.6%(前年同期比+3.2pt)
・ADR:9,200円(前年同期比+6.5%)
・ホテル部門NOI:約8,500百万円(前年同期比+約15%)
レジデンス部門は安定的に推移。築古物件のリノベーションによる賃料改善が一部で見られたが、全体としては横ばい。
・レジデンス売上高:約4,200百万円(前年同期比+約4.8%)
・空室率:5.3%(前年同期比▲0.8pt)
借入と債券による拡張

借入金:低金利環境を活かした長期借入
2016年6月期では、新規借入が約250億円実施され、平均金利は0.48%。期間は5.0年で、既存借入の一部は繰上返済された。金利変動リスクの軽減と財務の安定化が図られている。
・新規借入:約25,000百万円(平均金利0.48%、平均期間5.0年)
・繰上返済:約6,000百万円
投資法人債:発行による資金調達の多様化
機関投資家向けに投資法人債を発行。発行額は約100億円、利率は年0.45%、償還期間は5年。信用力の維持と資金調達の選択肢拡大が目的。
・発行額:約10,000百万円
・利率:年0.45%
・償還期間:5年
財務指標:短信ベースで再計算
・ LTV(Loan to Value):50.0%
・ DSCR(Debt Service Coverage Ratio):16.4倍
これらの指標は健全であり、財務の安定性は確保されている。ただし、資金調達の設計思想や将来的な資本政策に関する記述はなく、数字の提示に留まっている。
インヴィンシブル投資法人はコミットメントライン契約を締結していない。資金繰りの柔軟性は、借入金と債券による都度対応に依存しており、予備枠の設定は行われていない。これは、資金調達の機動性に対する備えが限定的であることを示している。
ホテル偏重の始動と思想不在の制度設計
2016年6月期は、インヴィンシブル投資法人がホテル偏重型REITとしての構造を形成し始めた期である。ホテル資産の構成比は約60%に達し、収益の柱としての地位が確立されつつある。
・ホテル資産構成比:約60.1%
・ホテル部門NOI構成比:約70.4%
だが、取得物件の選定理由や都市戦略、ブランド戦略は語られておらず、IR資料は「取得しました」の羅列に終始。思想なき拡張主義の萌芽がここにある。
ESGへの取り組みも未整備。環境配慮型設備の導入や地域連携の報告はなく、REITとしての社会的存在意義はまだ語られていない。

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