2026年6月17日にいちごオフィスリート投資法人の決算が発表されました。
分配金は当初の予想一口当たり分配金が2,274円のところ2,376円で着地しました。
心築による価値創造と資産入替で描く成長戦略

2026年4月期のいちごオフィスリート投資法人は、「心築(しんちく)」による不動産価値向上を成長の中核に据え、内部成長と外部成長を両輪とした運用を推進しました。将来の収益成長が限定的な物件を売却し、その資金を成長余地の大きい資産へ再投資することで、ポートフォリオの競争力を高めています。
外部成長では、大分県大分市のオフィスビル「いちご・みらい信金ビル」を帳簿価額の約1.7倍となる17.5億円で売却し、約5.2億円の売却益を実現しました。一方で、東京都立川市の「いちご立川公園通りビル」と千葉県船橋市の「いちご船橋ビル」の2物件を取得し、資産の入替を実施しています。取得した2物件はいずれも空室や賃料ギャップの解消による収益向上余地を持ち、将来的な収益成長が期待される資産です。
内部成長では、好調なオフィス賃貸市場を背景に賃料増額が大きく進展しました。契約更改における平均賃料増額率は12.3%、テナント入替時の賃料増額率は23.7%となり、いずれも極めて高い水準を達成しています。特に入替時には89.8%の区画で賃料増額を実現し、月額賃料の純増額は2,148万円に達しました。
また、独自の「いちごセットアップオフィス」や「いちごラウンジ」などを活用した差別化戦略、共用部リニューアルやセットアップオフィス化を中心とした心築CAPEXも成果を上げています。例えば、いちご渋谷道玄坂ビルではセットアップオフィス導入によって賃料改定率73.9%、いちご恵比寿グリーングラスではROI78.2%という高い投資成果を実現しました。
安定財務とESG推進による持続的な価値向上

財務面では、成長投資と投資主還元を両立する運営を進めました。当期は物件取得資金や投資法人債の償還資金として借入を実施し、有利子負債残高は1,470億円となりました。平均借入金利は1.16%まで上昇したものの、長期固定金利を基本とした調達方針を維持し、財務安定性を確保しています。
また、投資主価値向上を目的として自己投資口取得を実施しました。当期は10億円を投じて10,262口を取得・消却しており、1口当たり分配金を16円押し上げる効果を生み出しています。前期分と合わせた自己投資口取得総額は25.8億円に達しました。
業績面では、営業収益86億9,900万円、経常利益36億2,600万円、当期純利益36億2,600万円を計上しました。NOIは過去最高となる59億3,900万円を記録し、巡航EPUは2,033円と前期比2.1%成長しています。1口当たり分配金は2,376円となり、期初予想を102円上回る着地となりました。
サステナビリティへの取り組みも着実に進展しています。当期は、いちご伏見ビルおよびいちご熊本ビルでCASBEE不動産評価認証を取得しました。また、保有物件における使用電力については、区分所有物件等を除き100%再生可能エネルギーへ切り替えています。
さらに、環境認証取得率は41.3%まで向上し、2029年10月期までに50%超を目指す方針です。2025年にはCDP気候変動プログラムへ初参加し、「B」スコアを取得したほか、本投資法人初となるZEB Ready認証も取得しました。
オフィス特化戦略を磨き上げる次の成長ステージ
2026年4月期は、いちごオフィスリート投資法人が持つ「心築力」「売却力」「利益還元力」が成果として表れた期となりました。オフィス市場の賃料上昇を的確に取り込み、テナント入替や契約更新を通じた高い賃料増額を実現するとともに、適切なタイミングでの資産売却によって多額の売却益も確保しています。
また、スポンサーパイプラインとして18物件・約813億円の物件情報を有しており、今後も優良オフィス取得による外部成長が期待されます。継続的な心築投資による価値向上、適切な資産入替、そして売却益と内部留保を活用した利益還元を組み合わせることで、巡航EPUと分配金の持続的成長を目指しています。
インフレ環境下においても、オフィス特化型REITとしての強みを発揮しながら、資産価値向上と投資主価値最大化を追求する姿勢がより鮮明になった決算であったと言えます。
