2026年9月17日にいちごホテルリート投資法人の決算が発表されました。
分配金は当初の予想一口当たり分配金が3,016円のところ3,761円で着地しました。
リニューアルと資産入替で成長性を磨くホテルポートフォリオ戦略

2026年7月期のいちごホテルリート投資法人は、ホテル市場の成長機会を捉えながら、既存資産の価値向上とポートフォリオの質の改善に注力しました。当期は、中国人観光客の渡航自粛や一部ホテルの休館による影響を受けたものの、ホテルオペレーターとの連携を強化し、収益力向上に向けた施策を積極的に推進しています。
内部成長の取り組みとしては、契約満了や契約更改のタイミングを好機と捉え、賃料条件の見直しやホテルのカテゴリーアップ、オペレーター変更などを実施しました。特に「Nest hotel alt.札幌大通」は約6か月間の休館を伴う大規模リニューアルを実施し、客室数と収容人数を拡大するとともに、ホテルの魅力向上を図りました。リニューアル後はRevPARや年間賃料の大幅な成長が見込まれており、今後の収益拡大の中核施策と位置付けられています。さらに「HOTEL THE KNOT YOKOHAMA」でもオペレーター変更と施設改修を進め、固定賃料を従前比114%増へ引き上げるなど、収益基盤の強化を進めました。
外部成長では、成長性が限定的と判断した「ホテルリブマックス日本橋箱崎」を帳簿価額の約1.3倍となる15.8億円で売却し、約2.8億円の譲渡益を実現しました。売却で得た資金は既存ホテルのバリューアップ工事や将来の新規ホテル取得へ再投資する方針であり、ポートフォリオの質的向上を目指しています。また、スポンサーグループからは15ホテル、約854億円規模のパイプラインが確保されており、今後も厳選投資による外部成長が期待されます。
強固な財務基盤と環境配慮を両立する持続可能な運営

財務面では、将来の成長投資を支える安定した資金調達基盤の維持に努めました。当期は既存借入金20億円の借換えを実施したものの、新たな大型調達や公募増資は行わず、財務規律を重視した運営を継続しています。また、日本橋箱崎の売却により得た資金については、譲渡益を投資主へ還元しつつ、余剰資金は資産取得や価値向上投資へ活用する方針を示しました。
2026年7月末時点の簿価LTVは47.0%、時価LTVは37.6%となっており、ホテル特化型リートとして安定した財務水準を維持しています。さらに金利固定化比率は61.6%を確保し、借入金返済期限も分散されていることから、金利上昇局面においても財務リスクを抑制する体制を整えています。
サステナビリティへの取り組みでは、「サステナブル運用」を重要な経営テーマとして推進しました。いちごグループ全体でRE100認証を取得し、保有する全ホテルの使用電力を100%再生可能エネルギーへ切り替えています。また、省エネ設備の導入や節水施策を進めた結果、38か月間で2,119トンのCO₂排出量削減を実現しました。さらに、節水による環境負荷低減を社会貢献活動へつなげる取り組みも実施しており、環境対応と社会的価値創出を両立させています。
「心築」による価値創造を通じた投資主価値の最大化
2026年7月期は、一時的なホテル休館や中国人観光客減少の影響を受けながらも、資産価値向上施策と資産入替戦略によって着実な成果を残した期となりました。営業収益は29億円、当期純利益は12億円となり、譲渡益の計上も寄与して1口当たり分配金は3,761円と当初予想を24.7%上回りました。
また、1口当たりNAVは183,437円まで上昇し、過去最高を更新しました。継続的なホテル売却による利益還元と、リニューアルや契約条件見直しによる資産価値向上が両立した結果であり、いわゆる「心築」による価値創造が顕在化した形といえます。
今後については、インバウンド需要やレジャー需要を取り込めるホテルへの厳選投資を進めるとともに、契約更改やオペレーター変更を活用した収益力向上策を継続する方針です。資産入替、バリューアップ投資、ホテル運営力の向上を組み合わせることで、収益成長とNAV成長の両面から投資主価値の最大化を目指す姿勢が鮮明となった決算であったと評価できます。
