2026年3月16日に東急リアル・エステート投資法人の決算が発表されました。
分配金は当初の予想一口当たり分配金が4,000円のところ4,000円で着地しました。
都市の成長を取り込む戦略的な資産入替と収益拡大

2026年1月期の東急リアル・エステート投資法人は、「成長力のある地域における競争力のある物件への投資」という方針のもと、資産入替と賃料成長を両輪とした運用を推進しました。2026年1月末時点の資産規模は取得価格ベースで2,442億円、保有物件数は28物件となり、投資対象を東京都心5区と東急沿線地域に集中させることで、競争力の高いポートフォリオを維持しています。
外部成長では、「長期投資運用戦略(サーフプラン)」に基づき、保有資産の入替を積極的に実施しました。当期はTOKYU REIT下北沢スクエアおよびTOKYU REIT虎ノ門ビルの共有持分を段階的に譲渡し、含み益の顕在化を進めました。譲渡物件はいずれも安定稼働していた一方で、今後の成長余地が限定的であり、大規模修繕負担の増加が見込まれる資産でした。売却によって創出した資金を、成長性や収益性が期待できる新たな投資へ振り向けることで、ポートフォリオの質的向上を図っています。
その一環として、2026年7月期にはスポンサーの東急株式会社から戸越銀座ラウンドビルと東急すすき野ビルを取得する方針を決定しました。戸越銀座ラウンドビルは今後の賃料上昇余地を有するオフィスビルであり、東急すすき野ビルは地域密着型商業施設として安定的な収益貢献が期待されています。取得物件の償却後NOI利回りは4.4%であり、譲渡物件の2.1%を大きく上回っており、収益性改善にもつながる資産入替となっています。
内部成長では、好調な東京オフィスマーケットを背景に賃料増額が大きく進展しました。当期に改定または入替が行われた103区画のうち54区画で賃料増額を実現し、全体の賃料増減率は8.1%となりました。青山オーバルビルやTOKYU REIT新宿ビル、東急虎ノ門ビルなどでは二桁台の増額改定も実現しています。加えて、ポートフォリオ全体の空室率は1.1%まで低下し、稼働率は98.9%という高水準を維持しました。賃料収入については、従来の年率2%成長目標を引き上げ、今後は年率3%以上の成長を目指す方針を掲げています。
安定財務と持続可能な運営体制の強化

財務面では、金利上昇局面への対応と資金調達の柔軟性確保が大きなテーマとなりました。当期は返済期限を迎えた長期借入金55億円のうち45億円を借換え、10億円を自己資金で返済しました。その結果、有利子負債残高は1,055億円となり、総資産LTVは43.0%、鑑定LTVは33.0%と低位で推移しています。また、取引金融機関4行との間で総額180億円のコミットメントラインを維持し、流動性を確保しています。平均金利は0.82%と低水準を維持している一方、今後の金利上昇を見据えながら、中期年限や変動金利借入を組み合わせる柔軟な調達方針へ移行しています。固定金利比率は91.0%、平均残存年数は3.69年であり、安定性と機動性を両立した財務運営を継続しています。
サステナビリティ対応では、環境性能向上と社会的価値創出の両面で取り組みを進めています。具体的には、省エネルギー化や設備更新、環境性能向上を意識した資本的支出を継続するとともに、東急グループによるエリア価値向上戦略と連携した資産運用を推進しています。また、グリーンファイナンス残高は275億円に達し、有利子負債全体の26.1%を占めています。
さらに、スポンサーである東急株式会社は投資口の追加取得を実施し、保有割合を15.24%まで引き上げました。これは物件供給を含むスポンサーサポートの継続姿勢を示すものであり、長期的な投資主価値向上を支える重要な基盤となっています。
“100年REIT”を見据えた持続的成長への布石
2026年1月期の東急リアル・エステート投資法人は、単なる資産規模拡大ではなく、ポートフォリオの収益性向上と長期的な価値創造を重視した運営を進めた期でした。成長余地が限定的な資産を売却し、将来性の高い物件へ入れ替えることで、収益基盤の強化と含み益の実現を同時に達成しています。
また、渋谷を中心とした東京都心エリアでは賃料上昇が続いており、保有物件の多くでアンダーレント状態が残っています。ポジティブギャップは商業施設で15.6%、オフィスで6.8%となっており、今後も賃料増額による内部成長余地が大きい状況です。
こうした環境のもと、本投資法人は修正EPS3,500円の中期目標達成と、分配金下限4,000円を維持しながら成長を続ける方針を掲げています。スポンサーとの強固な連携、優良なパイプライン、東京都心への集中投資という強みを活かしながら、「100年REIT」を目指す長期的な成長戦略が着実に前進した決算であったと評価できます。
