2026年10月16日に野村不動産マスターファンド投資法人の決算が発表されました。
分配金は当初の予想一口当たり分配金が3,695円のところ3,695円で着地しました。
尚、利益超過分配金424円が含まれています。
資産入替の継続実施によるポートフォリオ強化

2026年8月期の野村不動産マスターファンド投資法人は、成長余地の高い資産への入替を進めることで、ポートフォリオの質の向上に取り組みました。当期は商業施設のGEMS立川と賃貸住宅のプラウドフラット清澄通りを取得する一方、晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーZおよび野村不動産広島ビルを譲渡しました。資産入替を通じて、築年数が浅く成長ポテンシャルの高い物件への投資を進める姿勢を鮮明にしています。
内部成長面では、好調な賃貸市場を背景に各セクターで賃料上昇が進みました。特にオフィスでは需給逼迫を背景に賃料改定時の増額率が7.3%、テナント入替による増額率が12.9%となり、高い成長を実現しました。新宿野村ビルでは大口テナントであるNREGの退去影響を受けたものの、退去区画については100%の申し込みを確保し、リーシングを完了しています。賃料増額を追求した結果、今後の収益回復につながる基盤を築きました。
住宅セクターも堅調に推移しました。東京圏への人口流入や住宅価格上昇を背景に需要が拡大し、賃料改定による上昇率は4.3%、テナント入替による上昇率は12.8%に達しました。物流施設でも賃料改定による増額率が13.8%と高い水準を記録しており、一部物件で大型解約が発生したものの、将来の収益拡大機会として積極的なリーシングを進めています。さらにホテルセクターではインバウンド需要の拡大を背景に変動賃料が増加し、収益成長を支えました。こうした取り組みにより、ポートフォリオ全体の稼働率は99.0%まで上昇し、安定した運用成果を実現しています。
借入コスト上昇下でも成長を支えた財務運営とESG推進

2026年8月期の財務戦略では、返済期限を迎えた有利子負債379億円のリファイナンスを実施し、手元資金による20億円の返済も行いました。その結果、有利子負債残高は5,202億円、LTVは46.1%となり、健全な財務基盤を維持しています。一方で、金利上昇局面の影響を受け、平均借入金利は前期の0.93%から1.06%へ上昇しましたが、借入期間の調整や変動金利の活用によって影響の抑制を図りました。加えて、ESGファイナンス残高は663億円まで拡大し、持続可能な資金調達も推進しています。
業績面では、不動産売却益の計上や賃料収入の増加が寄与し、営業収益43,151百万円、営業利益18,050百万円、経常利益15,208百万円、当期純利益15,207百万円となりました。また、1口当たり分配金は3,695円となり、前期比61円増加しました。賃料収入の伸長や修繕費負担の減少などによる内部成長が、金利負担の増加を吸収する形となっています。
サステナビリティの面では、2019年に定めたマテリアリティに基づき、環境負荷低減と社会課題解決に向けた取り組みを継続しました。グリーン認証の取得を推進した結果、3つ星相当以上の認証取得率は延床面積ベースで65.8%まで向上しています。また、2030年度までに温室効果ガス排出量を2019年度比80%削減する目標を掲げ、再生可能エネルギーの導入拡大を進めています。社会面では、地方創生イベントの開催や障がい者アート支援、教育活動への協力などを通じて地域社会との共生を推進しました。
着実な内部成長を実現し11期連続増配へ
2026年8月期は、賃貸市場の追い風を捉えた賃料増額戦略と資産入替によるポートフォリオ強化が大きな成果を上げた期でした。新宿野村ビルや物流施設で大型解約の影響があったものの、オフィス、住宅、物流、ホテルといった幅広いアセットで賃料成長を実現し、それを上回る内部成長を達成しています。特に東京圏を中心とした高い競争力を持つ資産群が、持続的な収益力向上を支えました。
また、資産入替による含み益の拡大や、ESG施策の着実な進展も特徴的でした。保有物件の含み益は3,190億円、含み益率は30.0%へ拡大しており、資産価値の向上も進展しています。金利上昇という逆風に直面しながらも、内部成長によるNOIの増加と柔軟な財務運営によって分配金成長を継続し、次期以降も11期連続増配を見込む水準に到達しました。2026年8月期は、総合型REITとしての分散効果と運用力を生かし、安定性と成長性の両立を改めて示した決算期であったといえます。
