2026年6月17日にKDX不動産投資法人の決算が発表されました。
分配金は当初の予想一口当たり分配金が4,166円のところ4,166円で着地しました。
分散ポートフォリオの強化と成長資産へのシフト

2026年4月期のKDX不動産投資法人は、総合型REITとしての強みを活かしながら、成長性と収益性の向上を目的とした積極的な資産入替を進めました。当期は居住用施設「KDXレジデンス瑞江」、商業施設「イーアス高尾」、物流施設「KDXロジスティクス昭島Ⅰ」の3物件を総額349億円で取得した一方、「新都心丸善ビル」と「KDX宇都宮ビル」を譲渡しました。これにより年間約7億円のNOI向上が見込まれ、資産規模は1兆2,189億円へ拡大しています。
今回の資産入替では、成長余地の限定的なオフィスや底地の売却を進める一方、インフレ環境下での賃料上昇が期待できる商業施設、物流施設、居住用施設への投資を強化しました。特に「イーアス高尾」は売上歩合賃料比率が高く、「KDXレジデンス瑞江」は東京23区内の築浅住宅であり、今後の内部成長を支える重要な資産として位置付けられています。
内部成長についても力強い成果が見られました。オフィス、居住用施設、商業施設の入替・更新による月額賃料増額は合計4,570万円に達し、前期の2,380万円を大きく上回りました。特にオフィスビルでは契約ベースで月額賃料が前期比81百万円増加し、賃料改定率は6.5%を記録しています。また、保有オフィスの平均レントギャップはマイナス10.2%まで拡大しており、今後さらなる賃料増額余地を有しています。
住宅分野では、好調な賃貸住宅市場を背景に、入替時賃料増額率が11.1%、更新時賃料増額率が4.4%まで上昇しました。さらにリノベーションによる付加価値向上も進み、リノベーション対象住戸では30%から50%超の賃料上昇を実現しています。こうした取り組みが継続的なNOI成長を支えています。
安定財務とESG推進による持続的な価値向上

財務面では、資産規模拡大を進めながらも健全性を維持しました。当期末の有利子負債残高は5,844億円となり、LTVは45.8%となっています。長期固定化負債比率は85.7%、長期負債比率は97.7%と高く、安定した財務基盤を維持しています。また、日本格付研究所からAAの格付を継続取得しており、高い信用力を背景とした資金調達が可能な体制を構築しています。
資本政策では、投資主価値向上を目的に最大60億円の自己投資口取得枠を設定しました。これまでの自己投資口取得と合わせ、合併後の取得総額は約160億円となっており、DPU押上効果は累計101円に達しています。さらに新たな自己投資口取得による追加効果も見込まれており、資本効率向上に向けた取り組みが継続されています。
業績面では、営業収益398億円、営業利益200億円、経常利益170億円、当期純利益170億円を計上しました。分配金は1口当たり4,166円となり、前期比61円増配を達成しています。既存物件の賃料増額、新規取得物件の収益寄与、売却益の活用が増配を支えました。
サステナビリティ分野では、2030年度までに温室効果ガス排出量を2022年度比42%削減、2050年ネットゼロを目指す方針のもと、各種施策を推進しています。2026年4月末時点で環境認証取得物件数は196物件、認証取得率は75.6%となりました。また、KDX虎ノ門一丁目ビルやKDXロジスティクス恩田原でZEB認証を取得するなど、環境性能向上にも注力しています。
さらに、再生可能エネルギー由来電力の導入やグリーンローン・グリーンボンドの活用を進めており、グリーンファイナンス残高は146.5億円となっています。社会面では児童養護施設への支援や災害対策設備の導入、従業員のサステナビリティ教育など多面的な取り組みを実施しています。
インフレ時代を見据えた収益成長モデルの確立
2026年4月期は、KDX不動産投資法人がインフレ環境を収益拡大の機会として取り込み、内部成長と外部成長を高い次元で両立させた期となりました。オフィス、住宅、商業施設を中心とした賃料増額が着実に進み、既存物件NOIは前年比2.7%成長を実現しています。
また、長期固定賃料中心のヘルスケア施設や底地を売却し、賃料上昇余地の大きいオフィス、住宅、宿泊施設へのシフトを進めることで、ポートフォリオ全体の成長力を高めました。さらに、ホテルの優先取得順位を引き上げるなど、今後の成長戦略も具体化しています。
今後も資産入替によるポートフォリオの強靭化、賃料増額を軸とした内部成長、自己投資口取得を含む資本政策を組み合わせながら、年率3%以上の分配金成長を目指しています。分散されたアセット構成と高い運営力を背景に、持続的な投資主価値向上への期待が高まる内容となりました。
